『凡事徹底』の先にある覚悟。 ヴェロスクロノス都農・大久保毅監督の挑戦と地域への想い
2026年シーズン、ヴェロスクロノス都農の監督に就任した大久保毅監督。過去にJFAでの指導者育成や育成年代、さらには女子チームなど多様なカテゴリーでキャリアを積んできた大久保氏が、なぜ今、人口約1万人の宮崎県に位置する町・都農の地で再びチームの現場に復帰したのか。
就任までの背景から、チームに求める指導哲学、そしてこの小さな町から「5か年計画でのJ3昇格」を目指すクラブの未来像について話を伺った。
現場への復帰、そして覚悟の就任

昨シーズン、全国地域チャンピオンズリーグ2025の決勝ラウンド。
「勝てば自動昇格、引き分けでも入れ替え戦進出」という悲願を目前にしながらも、ヴェロスクロノス都農は最終戦で0-1で敗れた。あと一歩のところで昇格の切符を逃し、チームは悔し涙をのんだ。
クラブとして新たな変革が求められる中、強化部長の根本氏から打診を受けたのが、大久保氏だった。
「ここ7〜8年ほど現場の指揮から離れ、指導者や育成年代の指導に携わっていました。ですが、自分の中でもう一度現場で指揮を執りたいという想いが高まっていたタイミングでオファーをいただき、引き受けることを決めました」
育成年代の指導においては、長期的な視点を持って個の成長をじっくり見守る我慢が求められる。一方で、現在監督を務める社会人カテゴリーにおいては「短期的な結果に対する強いこだわり」が何よりも求められる。
「両者に指導の本質的な差はありませんが、結果に対する使命感の重さは大きく異なります。九州リーグを勝ち抜き、その先の地域チャンピオンズリーグを突破するためには、何としても勝ち切る執念が必要です」
凡事徹底とピッチ上の「主体性」
今季のチーム作りにおいて、大久保監督が最も強調しているのが「主体性」と「凡事徹底」の精神だ。
チームの強みとして「ひたむきで真面目、本当に良い選手が揃っている」と評価する一方で、勝負どころでの厳しさや競り合いの強さに課題を感じることもあるという。
「ピッチ上には選手にしか判断ができないような状況があります。 選手自身が感じ、考え、自立して判断・行動できる『主体性』がなければ、苦しい局面を打開することはできません。そのために日々の練習からオフザピッチに至るまで、自分たちで責任を持った行動を求めています」
また、特別な雰囲気を作るのではなく、日々の当たり前をどこまで愚直に突き詰められるかという「凡事徹底」の姿勢を徹底している。
「天皇杯でヴィッセル神戸と対戦した際も、彼らはチャレンジ&カバーといった守備の基本動作を当たり前に、愚直にやり続けていました。疲れた時に隙を見せない姿勢や基本の徹底こそが、上に行くために不可欠な要素です。目の前の1試合、目の前のプレイに対して当たり前のことを全力でやり続けること。それが昇格への最短ルートだと信じています」
アカデミーとの連携と「地域と共に生きる」意味
ヴェロスクロノス都農が本拠地を置く都農町は、人口約1万人の町だ。だからこそ、クラブと地域の関係性は切っても切り離せない。
「僕たちだけの力では成し得ないことがたくさんあります。仕事や暮らしを含め、地域の方々に様々な形でサポートしていただいている。その恩返しとして僕たちにできるのは、ピッチ上でひたむきに走り、戦う姿を見せることです。試合を見て元気や勇気、希望を感じてもらえるような存在でありたい」
地域密着の象徴として、大久保監督はアカデミーとの連携強化にも乗り出している。トップチームの選手何名かはアカデミーのスクールコーチを務めているが、そうした指導現場での関わりにとどまらず、下部組織の選手をトップチームの練習やトレーニングマッチに積極的に参加させる環境を新たに整えた。
「これまでアカデミーから直接トップチームへ昇格した例はありませんでした。ですが今後は、地元や九州の子供たちが『このチームでプレイしたい』と夢を抱き、実際にトップへ昇格していけるサイクルを作ることがクラブの戦略的目標です。JFL昇格、そしてJ3昇格を果たし、全国の強豪チームが繰り広げるハイレベルなプレーや激しさを間近で見てもらうことで、子供たちに大きな夢や希望を届けたいですね」
勝負へのこだわりとフェアプレイの両立
大久保監督が掲げるサッカーのテーマは、極めて明確だ。
「スポーツである以上、勝つことに徹底的にこだわります。負けていい試合なんて一つもありません」
しかし、ただ勝てばいいというわけではない。
「相手を傷つけるようなプレーやルールを無視した勝ち方は認めません。自分たちの目指すスタイルを体現して勝ち切ること。そして対戦相手から『本当に強かった、またこのチームと戦いたい』と敬意を払われるようなフェアプレー精神を併せ持つことです。プレッシャーの中でも、選手たちが楽しさと達成感を掴み取れるサッカーを目指しています」
その想いを伝えるため、大久保監督は毎朝の挨拶やグータッチを通じ、全選手との個別の対話とコンディションの把握を欠かさない。30名を超える選手の中からメンバーを選考する厳しさと向き合いながらも、誠実なコミュニケーションで信頼関係を築いている。
サポーターと共に掴む「覚悟」の先へ
2022年から掲げられた「5年以内でのJ3昇格」という目標に向け、残された時間は決して長くはない。九州リーグの戦いを制し、全国の舞台を勝ち抜くためには、クラブ全体としての「覚悟」が問われる。
「去年悔しい思いをした選手たちが数多く残っています。その悔しさは、同じ舞台で勝つことでしか晴らせません。チーム一丸となって必死に勝利を目指します。サポーターの皆さんの熱い声援は、背中を押してくれる最大の力です。みんなで都農町の名を全国に轟かせられるよう、共に戦ってください」
ひたむきな努力と、凡事徹底の先にある勝利——。大久保監督と選手たちが目指す昇格に向けての挑戦は今後さらに熱を帯びて加速していく。
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大久保 毅監督
ー経歴ー
【〜2019年】
V・ファーレン長崎や鹿児島ユナイテッドFCなどで監督・ヘッドコーチ、アカデミーダイレクターなどを歴任。
【2020年〜現在】
JFAコーチ九州チーフ、年代別日本代表(U-14/15)コーチ、鹿児島県FAコーチとして育成に尽力。
2026年より、ヴェロスクロノス都農の監督に就任。






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